日本の伝統的な和の婚礼衣装でもある「白無垢」「色打掛」「黒引き振袖」について、その由来や種類(生地・色味・柄)、お衣装の構成・小物を本記事では紹介いたします。
当館ではこれまで多くの新郎・新婦様に和装のご案内をしておりますので、本記事にて和装についてご興味をお持ちいただければ幸いです。
平安の頃より、花嫁の婚礼衣裳として白色が好まれたようで、古代より、白は神聖な色として神事に用いられてきたそうです。
白無垢には、純真無垢という意味もあることから、花嫁が嫁ぎ先の家風に染まる、という考え方から婚礼衣裳としても着用されました。
白無垢が正式な婚礼衣裳として定められたのは、室町時代、足利幕府により始まった礼道教育がきっかけです。
使用する生地や色味、柄など、白無垢といっても様々な種類があります。
生地・色味
白無垢に用いられる生地は下記の3種類です。
正絹(しょうけん)・・・絹(シルク)100%で織られた生地。色味はオフホワイトやアイボリー。生地に光沢があり、しなやかで着崩れしにくい。
交織(こうしょく)・・・緯糸(よこいと)に化繊、経糸(たていと)に正絹を使用して織られた生地。
化繊(かせん)・・・化学繊維の糸を使用した生地(ポリエステル)。やや青味がかった純白。生地が固く、着崩れしやすい。
白無垢の代表的な織り方を紹介します。
綸子(りんず)・・・経糸(たていと)と緯糸(よこいと)ともに撚りのない生糸で織る。光沢があり、やわらかく滑らかな肌触り。
緞子(どんす)・・・生糸を精練した絹糸を使用して織る。厚みがあり高級感も感じられる。
縮緬(ちりめん)・・・撚りの強い生糸を緯糸(よこいと)に用いて織る。表面に「しぼ」がある。
柄
白無垢には、「吉祥文様」(きっしょうもんよう)と呼ばれる縁起の良い柄が用いられます。
主な柄を紹介します。
鶴・・・中国では千年生きるとされ、瑞鳥(ずいちょう※)の一種として崇拝された。日本においても延命長寿の象徴として尊ばれ、大変おめでたい文様。※瑞鳥…めでたいことの起こる前兆とされる鳥
鳳凰・・・古代中国において、鳳凰は龍、亀、麒麟とともに、めでたいときに表れる天の使いである清四瑞のひとつとして尊ばれている。日本では、飛鳥時代に中国から伝わった鳳凰文を基本に、工芸品などに施されるようになった。
菊・・・奈良時代から平安時代にかけて、中国から伝えられた菊は、長寿を象徴する代表的な植物。秋の花とされているが、季節を問わず用いることができる。
ふき
着物の袖や裾の部分の裏地を表に折り返し、見えるように仕立てた部分を「ふき」といいます。裾の部分は「ふき綿」といって、たっぷり綿を入れて仕立てます。
「赤ふき」といって、ふきが赤い白無垢もあります。
白無垢の下には、肌襦袢から掛下まで順番に着用していきます。
肌襦袢・・・和装の下に着る肌着。
長襦袢・・・肌襦袢の上に着る。衿がついており、着物の下のベースとなる。
掛下(掛下着)・・・白無垢の下に着る振袖のこと。白地が基本。
掛下(掛下着)の色変え
白が一般的とされていましたが、最近は色掛下を用いたカラーコーディネートも人気があります。
赤掛下のほか、ピンク、ベージュ、ネイビーなどお好みの組み合わせを見つけてみてください。
古くは実用品として身に着けていたものが、現代では装飾品として花嫁姿に華を添えます。
ひとつずつ紹介していきます。
筥迫(はこせこ)・・・武家の女性が鏡やおしろい、懐紙などを入れて持ち歩いた化粧ポーチ。
懐剣(かいけん)・・・護身用の短刀。
末広(すえひろ)・・・扇子のこと。要(かなめ)から広がっていく形が末広がりでおめでたいとされる。
帯揚げ・・・本来は帯を結ぶときに使う実用品であったが、現在は胸元を飾る小物として使用する。
帯締め・・・帯を結んだときに使う。花嫁衣裳では丸ぐけの帯締めを使用する。
川島織物
可憐に咲く桜の花に舞飛ぶ純白の鶴。寿ぎ喜びを表した格調高い白無垢です。
織りあげられた機屋は明治二十四年に国内第一号宮内庁御用達と指名された川島織物です。
白無垢 紅白
世界遺産 富岡製糸
日本で最初の官営工場 富岡製糸場がユネスコ世界遺産に認定された記念として純国産絹の素材を使用した繊細で光沢のある白無垢。
昔は特権階級の女性が正装として着用していました。きものの上に「打ち掛けて」羽織ることから打掛と呼ばれ、白以外のものを総称して色打掛と呼びます。
安土・桃山時代の武家の女性は華やかな打掛を着ていましたが、江戸時代に入ると打掛は武家の正装とされるようになり、地白・地黒・地赤の綸子などが使われるようになりました。
江戸時代は、大奥に勤める上臈(じょうろう)や中臈(ちゅうろう)、内裏の上級女官や一般公家の女性も日常的に着用していたようです。
白無垢から色打掛に掛け替えることには「嫁ぎ先の家風に染まる」という意味が込められていました。
本来「お色直し」とは、白無垢から色打掛へ替えることを意味したのです。
現代でも色打掛から白無垢への衣裳替えはしないというルールがあります。
色打掛の場合、中に着る掛下(掛下着)を白無垢と兼用することができるため、白無垢から色打掛への衣裳替えが容易です。
もちろん、白無垢の時と色打掛の時で掛下(掛下着)を替えてみるのもおすすめです。
元々は、唐織(からおり)、錦織(にしきおり)、金襴(きんらん)などの豪華絢爛な「織り」が主流でした。
「織り」のほか、友禅(ゆうぜん)や絞り(しぼり)の「染め」や、京縫(きょうぬい)のひとつである相良刺繍(さがらししゅう)といった「刺繍」の色打掛もあります。
唐織り 桃山時代
さまざまな種類の貝と鶴亀で、春の景物を中心に構成され椿・桜・藤などに鶏が加えられ四季が盛り込まれる。
鹿に萩・楓・菊などで秋の風景を表した打掛です。
春秋桜花地紋(白地)
春の桜 夏の波 秋の紅葉 冬の雪を描かれた打掛です。
黒の振袖は江戸時代の御殿女中の装いで女性たちの憧れでした。その憧れである黒の振袖を女性たちが嫁ぐ際の装いとして、模したのが始まりと言われています。
大正から昭和にかけては、一般的な花嫁の装いとして人気がありました。
黒い婚礼衣装は「あなた以外の誰の色にも染まらない」という花嫁の決意を表します。そのため、当時は白無垢から黒引き振袖へのお色直しも一般的でした。
また、白無垢や色打掛と異なり、帯結びを見せることも特徴のひとつです。立て矢、文庫、太鼓など様々な結び方があります。黒引き振袖と帯まわりのコーディネートを楽しんでみてくださいね。
本手描友禅 松菊文様黒地
日本の古典をモチーフに色も古代色を追求し日本の心を表現し創作したお衣裳です。
また、漆を重ね塗り、喜びが重なり合っておめでたく松菊文様も格調高く描きあげました。
古き良き時代の花嫁衣裳の香りを残し現代の「慶き日」に伝える、京友禅本手描の逸品です。
当館にて結婚式・披露宴をご実施いただく新郎・新婦様にまずご案内をさせていただくのが「お衣装の下見」です。
その際には当館と提携を結んでいるお衣装店にて、新郎・新婦様に和装をご試着いただけますので、実際に和装のお衣装をご着用いただき、ご自身に合った和装衣装(白無垢・色打掛・黒引き振袖・赤無垢・他)を見つけてくださいね。
この記事の執筆者: 浮月楼 ブライダル課
浮月楼は明治時代から130年続く静岡の料亭・結婚式場で、これまで約1万組の結婚式・披露宴プロデュースに携わってまいりました。 当館にて挙式・披露宴を予定している新郎様・新婦様のお二人はもちろん、御婚儀を控えた皆さまのお役に立てるよう、御婚儀に関する情報の発信をしております。